『いい人』と思われたい人がよくする行動の中に、『未来に借金をする』というのがあります。
これは社交辞令などもその中に入りますが、その場限りのリップサービスで「これしてあげる」などと、望まれてもいないのに自分から提案したり、
「今度飲みに行きましょう」「これ、やりたいんだ」「そこ、行きたいんだよね」「次回はボクが幹事をやるよ」などと、それほどやりたくもないのに軽々しく口にするのです。
いえ、言っているときは、場が盛り上がっていたり、気分が乗っているので、本気でやりたい、やってあげたいと思っているつもりでいます。
でも、本気でやりたいことっていうのは、なんとかお金を捻出したり、なんとか時間を作って、そんなに間を空けずにやるものです。
本気で行きたければ、国内であればほぼ、日帰りで行くことができます。
でも、何かを言い訳にしてなかなかやらないのですから、本気でやりたいわけではないのです。
本気でやりたいわけではないので、期限がない場合はいつまでもやらなかったり、約束の日が近づくにつれて気が重くなっていきます。そしていざ、実行のチャンスが来たときには、具合が悪くなったり、用事が出来たりするのです。
こういう、本気でもないのに約束したり、やりたいと口にするのって、未来に借金をしているようなものです。
私は、気軽にこういうことを口にする人の発言は、「どうせまた、思ってもいない、いつものリップサービスなんだろうな」と、だんだん信じなくなっていきます。
みなさんも、「あれ?」と気づいた時点で、そうなっていくのではないでしょうか。
約束を守らなかったり、口にしたことを実行しなかったことで、このように人からの信用を失うのはもちろんですが、
それよりもずっと怖いのが、自分のことを信じられなくなることです。
自分のことを信じられないのに、自信なんて持てるわけがありません。
具体的に見てみましょう。
例えば、お友達が「忙しくて生活が不規則で、外食ばかりなんだよね」と言っているのを聞いて、
頼まれてもいないのに「お弁当を作ってきてあげる」と口にしたときの例で考えてみます。
約束時点
- 生活が不規則そうで、健康に良いものを食べさせてあげたいという、優しい気持ち。(純粋な愛情)
- 料理上手という、良いところを見せたいという気持ち。(価値を高めたい)
- 役に立ちたいので、できることをしてあげたいという気持ち。(存在感のアピール)
- 一緒に食べると楽しいだろうな、という気持ち。(居場所の確保)
こういう気持ちが合わさって、「お弁当を作ります」という発言になったりします。
その時は自分には『良い気分』だけしかないし、相手にも『良い気分』のプレゼントができるので、気軽に約束します。
そのときはノリノリだけど、お弁当を作ることって、けっこう手間だし、慣れていないと負担です。
時間が経つにつれて、こういったマイナス面を思い出すのです。
これが、時間の経過と共に、どう変化していくかを具体的に見ていきましょう。
少し時間が経ったとき
- おせっかいだと思われたんじゃないだろうか。(不安が出てくる)
- 冷静に考えると、そんなにレパートリー多くないなぁ。(自信のなさが出てくる)
- 美味しいって言ってもらえなかったらどうしよう。(不安)
- けっこう時間もかかるだろうな。(現実を思い出す)
- ちょっと面倒になってきた。なんであんなこと言っちゃったんだろう。(後悔)
- でも、約束しちゃったんだから、やらなきゃな。(自分がやりたいという気持だったのが、『やらねばならない』に変換される。)
このあたりが、まずやってきます。
そしてさらに時間が経ちます。
面倒という気持ちが膨らんで、最初の頃に思っていた、役に立ちたいという気持ちなどは忘れてきます。
さらに時間が経った場合
- あの人、お弁当のこと覚えているかなぁ。
- 作らなかったら、約束やぶったとか思われちゃうんじゃなかろうか。(不安)
- あの人が規則正しい生活をしてれば、こんなことにはならないのに。(相手のせい)
- 会うと思い出すかも。
- 顔を合わせるの、気まずいなぁ。
こんな風にして、相手のことをだんだん疎ましく思うようになったり、なんとなーく嫌いになったりするのです。
『未来に借金』って、その未来になったときには、けっこうな負担なことがあります。
やりたかったことが、やらなきゃならないことになって、次第に重くのしかかってくるのです。
この、重い気分の見返りが、その場いっときだけの『良い気分』だけでしかないなんて、まったくもって割に合わないと思いませんか?
では、未来に借金をしなかった場合に、どうなるか考えてみましょう。
約束をしなかった場合
- 生活が不規則そうで、健康に良いものを食べさせてあげたいという、優しい気持ち。(純粋な愛情)
- 料理上手という、良いところを見せたいという気持ち。(価値を高めたい)
- 役に立ちたいので、できることをしてあげたいという気持ち。(存在感のアピール)
- 一緒に食べると楽しいだろうな、という気持ち。(居場所の確保)
これらを感じたけど、ぐっと言葉を呑み込んで、お弁当を作る約束をしませんでした。
でも、作ってあげたい、役に立ちたいという気持ちは抱いたままです。
時は流れ、時間ができたときにこのことをふと思い出します。
「あ、そういえば、お弁当作ってあげたいって思ったんだ。今は時間にも気持ちにも余裕があるから、向こうの都合が合うようなら作って持って行ってあげよう!」
そう思い立って、連絡を取り、作ります。
自分が作りたくて作るので、ノリノリで楽しく作ることができます。
そして、お弁当を届けます。
受け取る方は、以前言ったことを覚えてくれていて健康を気遣ってくれたんだ~と、嬉しく思い、感謝します。(純粋な愛情を受け取る)
そして、一緒にお弁当を囲み、楽しくいただきます。(居場所が確保される)
期待していなかった分美味しいと感じ、お料理上手だねーと、褒めます。(価値が高まる)
こうなれば、存在感もバッチリでしょう。
どうですか?
未来に借金するのとしないの、結果が大きく違うでしょ。
有言実行・不言実行
友人に、次々と未来に借金をする人がいます。
でも、彼女は全部約束を守るので、周りの人達から大人気です。
私から見ているととても忙しそうに見えるのですが、彼女はそうして人と交流したり、人のために何かをしてあげるのが大好きみたいなのです。
そういうタイプの人であれば、未来に借金しても、利息が付く前にすぐ返せるので、大丈夫なのだなぁと彼女を見ていて思いますが、普通の人にそうそう真似できることではありません。
『有言実行』という言葉がありますが、一旦口に出したことは、無理やりにでも実行しておかないと、自分の為にダメなのです。自分にだけは嘘はつけないから、自分が信用できなくなる=自信が持てなくなるんです。
めんどくさがりな人は、『不言実行』で行った方が、問題が少ないのではないかと思います。
『○○してあげる』『○○したい』なんて、前もって自分から言う必要なんてないのに、
そして、やりたくなったら黙ってやればいいだけなのに、
「人からよく思われたい」なんて思っていると、ついつい気軽にやっちゃうんですよね。
未来に借金。
2014年11月24日