人間関係は 互いの反応によって作られる
友人が、最近職場で上司から嫌われて、いじめにあっているそうだ。
彼女は今までそんな目にあったことがなくて、自分が人からそんな風にされることになるなんて、今まで考えてもいなかったみたい。
人を嫌いになる理由は、自分の心の中にある。
自分が自分に禁止していること(嘘やらズルやら人を傷つけることらやマネやら裏表やら不潔やら・・・いろいろ)を平然とやっている人を見ると、腹が立ったりする。
彼女は、けっこうちゃらんぽらんに見える。
友人としてはそこが面白いのだが、上司はきっときまじめなタイプで、いい加減さを自分に禁止しているんだろう。
また、コンプレックスを刺激されたときも、その不快感を相手のせいだと錯覚して嫌いになったりする。
人を嫌いになったとき、自分の力や立場が強ければ、相手にダメージを与えるという形で不快感を表現しようとする。
それを表現された方は自分に非があるんじゃないかと自分を責めたりするんだけど、最初はそうじゃない。
でも、それを自分に対して表現することを、早いうちに拒否できずに許してしまい、いじめにまで発展させてしまうのは、その人の問題にもなってくると思う。
人の関係は一方的にできるものではなく、お互いの反応で作られていくものだから。
広告代理店に勤めていた時のはなし
上司、豹変す
彼女の話を聞いていて、20代の半ば、同じような経験をしたときのことを思い出した。
私の人生の中でワースト3に入る位の不快な経験だったんだけど、それまですーっかり忘れ去ってしまっていたことに、自分でビックリした。
SEをやめて、広告代理店に勤め始めたばかりの頃の話だ。
入社したばかりの頃、直属の上司にえらく可愛がられ、仕事をたくさん教えてもらっていた・・・1ヶ月半くらいの間だったかな。
その上司がある日を境に、急変したのだ。
突然、それまでやっていた仕事を全部取り上げられ、することがなくなってしまった。
手が空いているので、他のグループの人の手伝いをしようとすると、「他の人の邪魔をするな!」と怒鳴られる。
トイレや台所の掃除でもしていようと思うと、すぐに追いかけてきて「そんなことしなくていい!」と連れ戻される。
勉強しようと資料を出すと、「仕事中に本なんか読むな!」と怒られる。
ただ、朝から定時まで、何もしないでただ机に座っていることしか許されないのだ。
定時が終わって帰ろうとすると、文章をただ書き写させるだけの意味のない仕事や、延々とコピー取りを言いつけられて、11時過ぎまで残業をさせられる。(残業代は1日2時間しかつかない)
職場の会議の時には、「A君も、B君も、Cさんも・・・」と、私以外の全員の名前を挙げて、続けてこう言うのだ。
「よくやってくれている。でも、中にはちっとも仕事をしない給料泥棒がいる」
社長にも、「あの子は全く役に立たないので、もう辞めさせた方が良い」と、私に聞こえるように提案していた。
自分から会社を辞めさせようとし向けているのがミエミエだったが、そこで辞めると逃げてしまうことになると思い、逃げるとまた同じ学びをさせられることに何となく気づいていた私はなんとか踏みとどまった。
悔しいので、その上司の前では泣かないように我慢していたが、だんだん感情のコントロールができなくなってきて、トイレに入ったときや会社の行き帰り、会社に行く前など、涙が勝手に出てきて止まらなくなっていた。
あのままがんばってそこに居続けたら、神経が参ってしまったのだろうと思う。
異動希望
それで、上司のさらに上の人に相談し、部署を変えてもらうことで ようやく最悪の日々から脱れることができた。
今の私だったら、直接ケンカもできるのに、当時はまだ弱っちくてできなかったんだなぁ・・・
それに、怒っちゃいけないを含め、こんなことしちゃいけないって思いこみがたくさんあったから、ケンカもできなかったんだろうと思う。
新しい部署は、本来やりたい内容とは違ったが、そこでは私に思いっきり仕事をさせてくれた。
新しい上司はあまり上昇志向のない人で、私が仕事を覚えて新しいことを提案しても、ニコニコと自由にさせてくれていた。
あまり頼りにならなかった分、いろいろなスキルが身についた。
独立のため退職
数年経った頃、会社が傾きかけたのを期に、私は独立して自営でデザイン事務所を立ち上げた。
独立してまもなく、その会社は倒産してしまい、社員たちはあちこちの同業他社に転職していき、そのうち何人かは私のクライアントになってくれた。
独立して1年くらい経った頃だろうか・・・
突然あの、私をいじめ倒していた元上司から連絡があった。
何事かと思ったら、
「前の会社の3人で、企画会社を立ち上げた。うちの仕事をやってくれないか」 というのだ。
元上司、謝罪する
ビックリした。
この人、何を言ってるんだろう?と、意味が分からなかった。
あれだけ無能扱いし、会社からいびり出そうとした私に、仕事を依頼したいなんて、全く理解できなかった。
怪訝そうな私に、彼は当時のことを説明し始めた。
自分の下に私が入ってきて、こいつは使えそうだと楽しみにいろいろ教えていたのだが、そのうち自分の立場が脅かされるのではないかと思い始め、怖くなった。
それで、私のことが憎くなり、自分の前から消そうとした。
すまなかった、と。
そう言われて、私は迷った。
二度と顔も見たくない相手だった。
仕事はお金よりも相手のためにするものなので、果たしてこの人のためにがんばろうと思えるのだろうか・・・
許すチャンス 成長のチャンス
でも、許すことにした。
昔のことを説明して謝るのには、さぞかし勇気がいったことだろう。
過去のことは水に流して、良い仕事ができた方が、お互いに成長できるに違いないと思ったのだ。
その後、元上司は私のクライアントになり、一緒にいくつかの仕事をした。
私がデザイン事務所をやめた時点で音信不通になってしまったけど、その後どうしているんだろうか・・・どうでもいいけど。
その後、私は彼のことをすっかり忘れてしまい、強烈な出来事の割には、ほとんど思い出すこともなかった。
おそらく、意識的に『許す』という行為をしたからだと思う。
許すチャンスがあったことは、すごくラッキーだった。
おかげで、仕事が切れたら彼との縁もきれいに切れ、私の中には彼の欠片がみじんも残っておらず、久しぶりに思い出した過去の記憶にも何も感じることはないのである。
2018年10月12日